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FLAME LAYOUT

 

 

 

 

 

 

January.2005 part.4
 

 

 

 

 

 


「ねぇ〜、山頂はどっちぃ〜?」

1月30日 なんちゃってホワイトアウト!

『今週末はかなり天気が荒れそうだな。』
『今週はド根性の雪山トレッキングはいやよ。』
『じゃ、先週OpenしたApple store Nagoya-SakeとPatagoniaでアーバンライフ♪を楽しもうよ。』
『らじゃー♪』

我が家のログハウスのロフトにある天窓にはしごを架けて顔を出すと鈴鹿山脈が望めるのだが、今日は養老山地方面から流れてくる雲に覆われてお山の姿は全く見えない。
ここで普通は『うっひっひ、お買い物ツアーに決定だぁ!』となるところだけども、僕の頭の中には吹雪の中をウキャキャキャキャ...とハイになって雪まみれで走り回る自分たちの姿が思い浮かぶ。

元来、野遊びは非日常を楽しむ遊びである。晴天無風もいいけど、条件が悪ければ悪いほど、より楽しく思い出深い体験となるし(但し“命の危険がなければ”だけど)、またそういう感覚を持ち合わせていなければ楽しめないというのも、また真なり!なわけで、そんな意味でロープウェイ往復の“なんちゃって”で雪山体験が出来そうな今日の御在所岳はApple Storeよりも多少魅力的。


ロープウェイで山上公園へ

(しかも、金欠病の我が家にとってはお財布に多少は優しい気が。iPod shuffle1台買わされたり、都会の洒落たレストランでランチするよりは、御在所で1日遊んだ方が間違いなくオ・ト・ク。ましてや、Patagoniaでどうしても欲しいウェアに出会ってしまったら......笑)


カモシカセンターまではツボ足で進む

寒いのが何よりも苦手なMamaはちょっと不満げだけど、実は先週の素晴らしい景色がお気に入りでまんざらでもなさそうなので、家でウェアを着込んで先週の装備に冷蔵庫のあり合わせの食材を鍋に詰め込んだものを加えて8:30に出発。
山麓駅に到着したのは9:15。天候が悪いからか駐車場は日曜だというのにガラ空きでスムーズにロープウェイに乗り込んで山上駅へ。

ロープウェイを降り山上駅の建物から出ると、もうそこは気温マイナス11℃の過酷な雪山。ブリザードって呼んでも差し支えない猛烈な風が地面の雪を舞い上げ、渦巻き、視界を奪う。スノーシューを手にツボ足(ブーツのまま)でスタートするけど、固く締まった雪はかなり滑りやすいので途中でスノーシューを履いてカモシカセンター前の広場へ。

前回は登山者の踏み跡が細い溝のようになっていたカモシカセンターからの道だけど、今日はフラット。吹雪のせいで足跡は全て消されていて、僕らが一番乗りのような感じだ。道の中央部は固く締まっていてツボ足でも問題なく歩けるけど、一歩脇にズレると固いのは表面の数cmなので、踏み込むとミシッ!という音を立てて表面が割れて膝まで沈み込むので、やはりスノーシューは必需品なのだ。


スノーシューを履いて森へ

堅い雪で歩きやすい(但しツボ足だと膝まで沈む)

カモシカセンター広場からのアカヤシオ樹林、別名『冬ソナの道』を進んだ僕らは、三角点方面に登らずにそのまま長者池へと向かう。長者池には小さな祠があって、賽銭箱の雪を払って賽銭を投げ入れてお詣り。長者池は直径10mほどの円形らしいけれど、深い雪に覆われてその姿をはっきり見ることは出来ない。祠には八大龍王善如王が安置されていて、ガン封じに霊験があるとのこと。(名前の由来など詳しくは御在所ロープウェイのサイトにて)


『あっ!かぐや姫!』ん?なるほど...

長者池

長者池から少しだけ坂を上り鳥居をくぐると、元の道に合流するのでここからさらに尾根道を進み御在所岳の前峰の山頂に立つ御嶽大権現(御嶽神社)へ。ところがここで急激に気象状態が悪化し、右斜め下から僕らの身体を持ち上げるような風が吹き、視界を奪われてしまう。ホワイトアウトだ!


樹氷が美しい尾根道

手をしっかり繋いでないと小さなAzuの身体がヒョロヒョロ〜って風下に持っていかれちゃう状態に、まっ先にMamaは不安を口にする。

『だ、大丈夫かなぁ?前も後も何にも見えないんだけど...。ああっ!足跡が消えてるぅ〜!』
振り返ると強風で僕らの足跡は2歩前ぐらいから先はかき消されてる!確かに十数メートル先を一番手でズンズン進むMaakunの姿が時折見えなくなったりする状況は彼女にとっては初めての体験。
『だ※じょ△×よ〜!』(だいじょうぶだよ〜)とMaakunの声が強風で扇風機に向って歌を唄ってるみたいに揺らぐのも彼女の恐怖感をさらに高めるようだ。
風が強過ぎて地図を広げられる状態でもないので(当然、正しい折り方で蛇腹状にしてあるけど)、左右の立木の雰囲気を観察して道を推測しながら進むと10分ほどで前方にぼんやりと鳥居が見えてくる。御嶽大権現だ。ここもガン封じのお社らしく、鐘を鳴らしてお詣りを済ませ1/3ほどが埋まって低くなった鳥居をくぐって引き返すことにする。


御嶽大権現に到着

長者池からは分岐を左に採って『大自然 自然のままに美しく』という、公園を維持管理する行政がなかなか出来ない努力目標(笑)の言葉が書かれてる国定公園記念碑方向へ進む。ここで再びブリザード(涙)。


わっはっはっは...頭がぶつかるぅ!

 


樹氷は頭をぶつけると痛い!

しかも初めて通るルートなので、Mamaが何度も何度も振り返って自分の来た道を確認してる姿が笑える。
どうも身体の中に方位磁石をビルトインしてると思われる“我が家の伝書鳩”Maakunは何の迷いもなく雪原を真直ぐに進んで行く。
『大丈夫だよ、Mama。オレ、三角点の方向見失っちゃいないから。』息子に勇気づけられるMama。どっちが親なのかワカラン(笑)。
でもMaakunの足があまりに速いので、みるみるうちに引き離されてしまい、白い“壁”にMaakunの姿が消える。さすがに見失うのはヤバいので『まあく〜ん!まさぁ〜!』と名前を連呼する必要がある。
カヌーのP.F.Dにはホイッスルが付いてて合図を決めてて便利なんだけど、今日はそれもなくて...今度から絶対に持って来よう感じた(意外と小電力トランシーバーが役立つかもしれないな)。


白一色の中に鮮やかなピンクが!

Mama、大丈夫?

 


先を行くMaakunが見えない!

 

斜面を100mほどトラバースして進むと、ようやく前方に山影が姿を現す。木が生えていないゲレンデのような急斜面を辿るとてっぺんに三角点の標識が見える。そしてその右側にぼんやりとした人影...何だかあの人妙にオレたちのこと見てるんだけど、アレは誰?間もなくして...『akiさ〜ん!』と呼ぶ声が(笑)

えっ?誰?
『akiさ〜ん!』
あ、あの声はひだださん!!またしてもアポなし偶然の出会い(どうやら考えてることが同じようですな...笑)。
実は僕も今日はひだださんに会うような気がして、実際に駐車場で後からBigHornが入ってきたとき思わず『ひだださ〜ん!』って手を振ってしまったのでした(人違いでメチャ恥ずかしかったけど...涙)。
でも、僕らより後で山麓駅に到着したひだださんは同行の鯖さんから“Maakun発見!”メールで僕らがここに来てることを事前に知ってたそうで(それにしても鯖さんはMaakunのことよく判りましたねぇ。)、雪面に残る僕らの4人分のMSRスノーシューの足跡からそのうち出くわすと踏んでいたらしい。
なんだか鹿を追う猟師みたいで可笑しいなぁ、それ(笑)


視界が回復し正面に三角点が(はひだださん)


無事到着したものの、山頂・三角点は痛いほどの風雪。先週ランチした休憩所の建物はまともに風を受けて寒すぎ。で、先週掘った雪洞に入ろうと思ったけど、中を少しでも広くするために芸術的なほど薄くした天井が降雪に耐え切れず崩壊していた(涙)。しょうがなく猛烈な吹雪の中、崩壊した雪洞の一部をさらに掘ってとりあえず風を避けられるようにして、狭い空間でMSRに鍋を架けて冷えた身体を暖めることにする。


先週の雪洞は崩れ落ち、吹雪が吹き荒れる三角点

ま、とりあえず防風対策完了!

遮風壁が出来てとりあえずは風を避けることが出来るとは言え、天井がない雪洞ってのは雪が容赦なく降り込むわけで(ツェルトも持ってたけど、この強風の中ツェルトを広げたら一瞬にして飛ばされそう!)僕らの身体に積もって真っ白なスノーマン状態。

生死に関わるとかじゃないけれど“なんちゃって”なレベルとしては結構な極限状態なわけだけど、何故かみんな妙にハイテンション(笑)。
『エライことになっちゃいましたなぁ〜!』
『雪山ですなぁ〜うっひっひ』
『オレ、世界一coolな男だよなぁ、ワッハッハ』
『ワタシの指先、きっと0℃よ。氷のオンナ...なんちゃって(笑)』
そう言えば豪雨の魚飛渓でずぶ濡れになりながら川に潜った後に岩陰でラーメン喰ってる時も何だか同じハイテンションだったよなぁ(*しかも、あの時も隣にひだださんがいたような気が...)。

狭い空間にバックパッカーズテーブルを置いてMSRのプレヒートの赤い炎が上がり始めると、普段であれば食事の時間も惜しんで遊ぶ子供たちも、今日は鍋の周りに集まり黙って鍋が煮えるのを今か今かと待っている。


今日のランチはモツ鍋...煮えたかなぁ〜?

 


多少は寒さをしのげるけど、天井がないと寒〜い!

 

余りに気温が低すぎてMSRの強力な火力を持ってしても鍋の蓋ばかりか鍋本体の上部も冷たいまま。
家族全員で鍋を囲んでじ〜っと見つめること10分(笑)、盛大な湯気が上がって鍋が沸騰し始める。

雪が渦巻く穴の中で聞くMSRの力強い燃焼音は本当に頼もしく、モツ鍋から立ち昇り始める湯気に顔を近づけると心まで暖まる気がして小さな幸せを感じるのである。
蓋を開けると一斉に箸を持つ手を伸ばす4人(笑)
『まだよ!まだ煮えてないからダメよ!』
みんなを制してMamaが試食。
『ングング...まだねぇ。』
ズルズル、ズルッ!口ではまだだと言いながら、何度もうどんをすするMama。
『あっ、Mama、試食にしては食べ過ぎ!ずる〜い!』『バ、バレた?(笑)』
わっと鍋に群がる子供たち。
『ん?なんだかこのキャベツの芯、まだ固いなぁ...まっいっか!』


うどんはどう?もう食べられる?

じゃ、食べちゃお!...ングング

普段なら文句を言うような固い芯やちょっと苦手なニンジンも今日は何でもガツガツ食べる子供たち。マイナス10℃の吹雪の中で家族で囲む鍋は好き嫌い&偏食を超えちゃうのである(笑)。
だいたいグルメなんてのは本当の空腹を知らない不幸な人が食べたくもない食事を何とか食べるために編み出した一種の方法(薬を包むオブラートと同様?)でしかない。グルメ志向反対!実は喰いモノに優劣なんてなくて、どんな場所でどんな状況で食べるかの方がずっと大切だと実感させられる瞬間である。

あっという間に鍋を食べ尽し、心も身体も暖まった僕ら。子供達はすぐに穴から飛び出して吹雪の中で雪遊び。僕とMamaはコーヒーを煎れようとMSRに小鍋を架ける。

その時、強風の轟音の中、スキー場の場内放送が切れ切れに聞こえてくる。

『ピンポンパンポ〜ン♪、ご来場のお客様に連絡致します。これ♀¥☆ロープウェイの%@$※xx@@##%%です。』と肝心の部分が聞き取れない。『“強風のためロープウェイは運行停止致します”だったりして!』なんて冗談を言って笑ってたら、遮風壁の外で遊んでたMaakunが戻って来て...

『お〜い!確か“ご来場のお客様に連絡致します。これ以上風が強まりますとロープウェイの運行が停止する場合がございますので、お早めに山上駅にお戻り下さい”って言ってるよ!』

へっ?ロープウェイ、止まる?止るってことは泊まるってこと?(笑)。頭で事態を理解する前にMamaは小鍋のお湯を捨てていた(笑)。慌ててて装備をザックに詰め込みながら『あぁ、シャレになんない、ヤバいヤバい!』口ではそんなことを呟きつつ、みんな目が笑ってる。“止って泊まる”のを何となく期待してるのはどうやら僕だけじゃないようだ。

Maakunが15分で止るって聞こえたかも?というので、歩いてたんじゃ間に合わないので、ロープウェイの山上駅までは山頂/三角点の乗り場からリフトで移動。風通しの良い場所を横切るシングルリフトはメチャ寒でもうほとんどブランコのようにブ〜ラブ〜ラ揺れる揺れる!あんなに揺れるリフトは初めての体験で、ちょっとした遊園地の子供用の乗り物のようだった。
(後のひだださん情報によればロープウェイは“×=15分で終了”ではなく“○=15時で終了”だったらしい...笑。僕らが下山する時にすれ違ったゴンドラでまだ山頂に向け上がってくる人もいたから、万一本当にやむを得ず運行停止に至った時に少しでも山上に残る人の数を減らしておこうというロープーウエイ側の配慮から、というひだださんの見解が正しいと思う。)


ロープウェイ運行停止予告に慌ててリフトで駅へ

濃霧&強風のロープウェイ

山麓駅で大石焼を味わう

今日は愛知県へお買い物ツアーに行く予定はなかったので(笑)ロープウェイの運行終了ギリギリまで山上で遊ぶつもりでいたのに、あっけなく14:30には山麓駅に下りてきちゃった僕らだけど、気を取り直して山麓駅で1/29に営業を再開した“湯の山温泉名物”「大石焼」を買い求めた後、日帰り入浴が格安の湯の山温泉「ヘルシーパル湯の山」へ。
Maakunと並んで広い露天風呂から周囲の山並を眺めつつ、冷えきったカラダを解凍してゆく快感!思わず『フニャファ〜!』と言葉にならないため息をついて、ふたりで大笑いする僕らだ。

『いいねぇ〜御在所。山上もイイけど、温泉に入っちゃうと、さらにやめられまへんなぁ〜、だよね。』
『過酷な状況であるほど、そこから解放?された後のヨロコビもひとしおだよな。』
『なんだか、今日はストイックな冒険に出てわざと自分を苛め抜く冒険家のキモチが解る気がするよ。』
『冒険の途中はきっと今日のオレたちの何倍もワクワクするんだぜ。で、オレたちの何倍もメシがウマイ。』
『で、冒険家も温泉に入って“フニャファ〜!”』(爆笑)

実は秘かに僕が内ポケットにGPSを忍ばせていること。なんちゃってホワイトアウトの中でもGPSが厚い雲の遥か上空の衛星を捕捉して15mの精度で現在位置を測位し続けていたこと...目を輝かせながら小さな冒険について語るMaakunにその話をするのはやめておこう...僕は思った。

 

  

 

 

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