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Photo Essay Vol.11

 

焚き火のそばで語り合う。僕にとってキャンプ最大の楽しみです。夜も更けて、焚き火のそばでバーボンでもやりながら語る話は妙に説得力があって....。討論するわけでもなく、沈黙が数十分にもおよぶことがあるのに白けてるわけでもない。ゆらぐ炎をぼんやり眺めながら聞く友人の話、誰に語ってるわけでもない自分の話。あれってもしかしたら独り言なんじゃないか。誰かに聞いてほしいっていう、そんな話じゃないですからね。聞いてるほうも、聞いてるよな、聞いてないよな、でも強く記憶に残ってる。僕のひとりごとのようなお話、聞きながらゆっくりとお酒でも飲んでて下さい。
第2回目のテーマはスペイン。何度も行ったのは昔のことだけど、今も僕のライフスタイルに大きな影響を与えてるスペインについてお話したいと思います。

 

SPAIN

僕はスペインフリークです。闘牛のテーマ曲「パソドブレ」なんて聞いたら涙ぐんでしまうぐらい。英語さえロクに話せない僕が、何を間違ったか外語系のスペイン語学科なんかに入学したことが、その発端でした。勉強は全然ダメだったけど、週に8単位のスペイン語の講義を4年間もみっちりやれば、嫌でもある程度はできるようになるよね。でも本当にスペインが好きになった訳、その一番の理由はスペイン人が大好きになったことかな。情熱の国だとかいわれてイタリア人と同様テンション高いと思われがちだけど、実際はとてもシャイ。近代の暗い歴史も大いに影響してるし、「ピレネー山脈超えたらアフリカだ。」っていわれてたように、他のヨーロッパの国々とは風土も人間性も全く違うんですよね。そう、あえていうなら「魅力的な田舎モノ」なのかな。フランス人は英語話せるのにフランス語を使うけど、スペイン人って英語話せないからスペイン語話す、みたいなところがあって、バルセロナなんかはちょっと違うけど、首都マドリーやアンダルシア地方の人なんてすごく田舎っぽい。

そんな国に僕が初めて行ったのが20歳の時。ザックにテントやシュラフ、ストーブなんかを詰め込んで、当時は貧乏学生専用路線だった、日本→マニラ→タイ→ボンベイ→スペインなんていう、まるで各駅停車の南回りのチケット片手に出発しました。当時のお金で5万円だけ持ってね。確か28時間かかったな。

マドリッドに着いて、とりあえず安宿を探して(1泊200円ぐらいの)早速Barに飲みに行ったんだけど、遅くなって宿に帰ろうとしたらなんだか雰囲気最悪なんですよ。テレフォニカ(電話局だな。)の裏手で少々危ないことは知ってたんだけど、僕の常識をはるかに超えた怪しい感じ。1つめの角曲がったら、いきなりHASISIの売人に声かけられて、次の角曲がったらオネエサンが豊かなムネ披露しながら体こすりつけてきて、「なんだ、ここは!お化け屋敷か!」って思いながら次の角曲がったら、強盗さんがナイフ突き付けて「money! money!」だもんね。要するにずっと狙われてたわけだ。でも有り難いことに1リットルワインを2本空けてヘベレケだった僕はちっとも恐くなかったんだな、これが。もちろんお金もちっとも持ってなかったし、奪われるとしたら命か純潔ぐらいのもの。じーっと目を見て、にっこり笑って”Soy jugador de KARATE. Tengo cinturon negro!"(俺、空手やってるの。黒帯持ってるの。)なんて冗談言ったら相手に通じちゃってね。言葉だけ通じたらヤバかったけど、ジョークまで通じたのか、「行け!」って目くばせしてくれた。「どうもおおきになー」とか日本語で言ったのを覚えてる。宿に帰って酔いがさめたら恐怖感が沸き上がって来て、酔いざめと恐怖でぶるぶる震えながらシクシク泣きました。後で聞いたらその強盗も以前に空手やってたみたいで(・・・強盗と被害者が後日Barでばったり出会ってcerveza=ビ−ル御馳走になった。)

ま、そんなこんなで、この年はその後タルヘタトゥリスティカっていうスペイン国鉄RENFEの乗りホ−ダイ切符(ユーレールパスみたいなの)を9000ptsで買ってぶらぶらとスペインの田舎を回ったんです。僕のスペイン語はエーカゲンだけど、当時スペイン語を話す日本人なんて田舎じゃほとんどいなかったから、チヤホヤしてもらいました。Aquiなんてあだ名までもらってね。もちろん、差別もありましたよ、確かに。僕とスレ違う人がみんな「チ−ッ」って声出して、いやーな顔される町とかね。何かなあって思ったので聞いてみたら「Chino」のことだったのね。Chino、つまり中国人、東洋人への蔑称だった。わざわざ目尻を両手で引っ張って「チ−」って言う人もいたぐらい。「No soy chino! Soy japones」(オレ、日本人。中国人じゃないよ!)なんて言い返すとみんなコソコソにげてくんですよ。目をつり上げて「チノ」垂れ目にして「ハポネス」なんてギャグかますとみんな笑いながら謝ってくれるんだから本当に悪い人たちじゃない。突然後ろから子供に蹴り入れられたこともあったな、「アチョーッ!」とか言って。しっかりブルース・リ−のモノマネしてあげたけど。まあ、とにかく田舎じゃ目立つ、目立つ。Monte Frioって村じゃ1軒しかないBarでおじさんたちと世間話してたら「うちに泊まれ!」「いや、うちだ!」って僕の争奪戦が始まっちゃって困った。結局、綺麗な小学校教師Gloriaさんのお父さんAlbertoさんが僕を落札(!)お世話になりました。

スペイン人っていうとラテン系→陽気→イイカゲンなんてイメージあるけど、付き合ってみると本当は正反対。律儀なひとが多いです。確かに感激屋さんも多いけどね。約束守らないなんていうのもウソ。もし約束破られたらその人にとってあんまり重要視されてないってだけ。本当に大切な用事の時はちゃんと5分前に待ち合わせ場所に来てくれます。彼ら本当にマジメです。人にもよるけど。もちろんスペイン人が仕事しないってのもウソ。失業率高いし、昼間っからブラブラしてる若者が多いからそんなイメージがあるんだろうけど、スペインって日本よりずっと過保護だから、いつまでも親と一緒に住んでるし、仕事なんてしなくてもとりあえずは食べていけるんですね。だけど、職のある人はよーく働きますよ。特にすごいのはBarのウェイターたち。「俺って仕事中毒」って公言する16歳に会ったことあるぐらい(笑)ただ、思想のどこかに「仕事は仕方なしにするモノ。生きるための手段。」てのがあるみたいで「俺って仕事なんてしてないけど、こんなに楽しく生きてるぜ!」ってふるまうのがカッコイイみたいだ。人の見てないところでスゴイ集中力で働いて、人の前では飄々と遊び人を装う。美学だなあ!日本人みたいに、たいして集中せずにダラダラと時間だけ長く仕事して、人に会うたび「忙しい忙しい、疲れた疲れた。」を連発するのは彼らにとって最悪みたい。

僕もMaa-kunとAzuが成人して、商売の方も区切りがついたら移住しようかなって思っています。ヨメさんも大学の後輩だからスペイン語の素養あるしね。(彼女の方が頭いいからDictionary,僕はSpeaker)実は向こうの友達のFrancisco(=Paco)とビル買ってHostal(=安宿)でもしようぜって約束してるから。ま、vino(=ワイン)シコタマ飲んでヘロヘロの時の約束だから、あてにならないけど。

 



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